4-2 分子スケールナノサイエンスセンター
評価委員会(外部委員によるヒアリング)開催日:平成16年12月13日及び15日 所外委員 岩澤 康裕 (東京大学,教授)
大嶌幸一郎 (京都大学,教授) 川合 真紀 (東京大学,教授) 関 一彦 (名古屋大学,教授) 所内委員 魚住 泰広 (分子研,教授)
小川 琢治 (分子研,教授) 松本 吉泰 (分子研,教授) オブザーバー 中村 宏樹 (分子研,所長)
ナノセンターの研究グループを二つに分け,松本,佃,夛田,田中彰治の4グループは13日に岩澤委員,川合委員 によるヒアリングを受け,魚住,小川,永田,鈴木,櫻井の5グループは15日に大嶌委員,関委員によるヒアリング を受けた。それぞれの日に,委員と中村所長を交えて,センター全体に対する評価を受けた。
4-2-1 所外委員の意見書
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本センターは,平成14年に,諸研究系,分子物質開発研究センター,錯体化学実験施設などを先行組織とする改組 により,「分子金属素子・分子エレクトロニクス」「ナノ触媒・生命分子素子」「ナノ光計測」の3研究部門と「先導分子 科学」の流動研究部門として発足し,3年目の途中での評価である。従って,人事的には従来組織からの継続が多い が,幾人かの新規採用や転出予定によって構成が変化し始めたところであると言えよう。
構成員の研究レベルは高く,評価資料によれば,今回私が面接を担当した5グループ(永田・櫻井・魚住・鈴木・小川 グループ)構成員は,2003,2004年度に原著論文23篇,総説・解説14篇を内外の一流研究誌に発表している他,特許 を6件申請し,国際会議招待講演10件,国内招待講演15件を行っている。これらには前任地での業績も含まれるが,こ れらのメンバーが活発な研究活動を行っている証と言えるであろう。
より具体的に各研究グループの独自の研究活動に言及する。
小川教授のグループでは,分子スケールにおける電子物性測定の確立を目指して,物質合成から物性測定までの多 彩な局面にわたって,優れた独自のアイデアで着実に研究を進展させている。この分野に係わる国内外の多くの研究 者とのネットワークも構築しており,日本のリーダーとしての活躍を期待する。
魚住教授のグループは,豊富な外部資金や人員をもとに,水中での多種の不斉反応の実現など,環境調和性の高い ナノ触媒を系統的に開発し,優れた成果を挙げている。魚住・永田・櫻井・佃グループが共同して開発しつつある金 属微粒子触媒の成果も興味深い。
永田助教授のグループは生体系を規範とする光合成物質変換システムの開発を目指して,デンドリマーとフェロセ ン・キノン類を結合した大型有機分子を巧みに合成し,その光誘起電子移動などの機能を評価しており,関連系を用い た触媒的酸化還元反応の開発も視野に入れている。高度な合成技術を活かし,良いアイデアにより,「新しい系」から
「新しい機能」を実現し,この分野での激しい競争の中で一歩抜け出されることを期待する。
鈴木助教授のグループでは,パーフッ素化炭化水素や含窒素化合物など,有機 E L 素子,有機電界効果トランジスタ 等の有機電子デバイス用材料の開発を進めている。実デバイスに用いたときにかなりの高性能を実現している材料も あり,今後の展開に期待したい。
櫻井助教授は着任後間がないが,このグループでは,C60などのフラーレン類の部分構造を有する,スマネンなどの バッキーボウル分子の新規で効率的な合成法を開発し,蛍光材料などへの展開も図っている。物理化学的測定により,さ らに深い展開が図れそうな点も多く見受けられ,所内外の他分野研究者との交流による今後の研究成果が期待される。
施設面では,分子研等の三研究所が従来展開していた明大寺地区からやや離れた山手地区に新築された山手3号館, 4号館,5号館を用いて空間的には比較的余裕のある展開が行えている。中でも 920MHz 核磁気共鳴装置は,独立に 5号館を用いるという恵まれた環境にある。
また,分子研は京都大学,九州大学とともに,文部科学省のナノテクノロジー総合支援プロジェクトの一環をにな う分子・物質総合合成・解析センターに認定され,本センターはその中心として通常の共同利用の他に「分子電子素 子のための,素子作成と電気特性計測システム」などを用いた共同利用(協力研究)を受付けている。例えば平成16 年度後期には17件を本センター教員が担当している。とくに平成17年度から共同利用に供される 920MHz 核磁気共鳴
(NMR )装置は国内最高水準を誇る装置であり,このクラスの装置の全国共同利用は分子研のみで行われている。さら に平成17年度後期から固体高分解能測定を可能にする準備が進んでおり,この装置の価値を高めようとしている。高 度な装置の効率的利用のため,予備測定システムの整備などが望まれよう。
分子研内外における本センターの位置づけと将来への展望:
センターのミッションは,センター規則によれば「原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新 しい機能を備えたナノ構造体の開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新 しい科学を展開するとともに,ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある物性機器,研究設備の集中管理を行い,こ れらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下で共同研究等を推進すること」となっている。このうち, 原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明や制御は,従来の化学や物理の分野でも日常的に行われているこ とであり,近年のナノサイエンス・ナノテクノロジーの高まりの多くの部分は,従来の化学・物理の研究分野を超えた, 新しい機能を備えたナノ構造体を念頭においた科学の展開,およびその体系化への努力によるものと考えて良いであ ろう。本センターでの研究・人事などにおいても,この点に特に留意した運営が望まれる。さらに,その中で,同様 の方向を目指している国内外の諸研究拠点に対し,分子研としての独自性・先導性をどう見出していくかがセンター 発展のキーとなるであろう。
分子スケールでの電気伝導測定や有機デバイスの評価は,この中で衆目の一致する研究主題の一つであり,小川教 授,夛田助教授のコンビが優れた独自の視点に立った研究を押し進めて来た。今後もこの方向は重要であり,合成化 学者とのセンター内連携,分子集団研究系(薬師,小林グループ),極端紫外光科学研究系(宇理須・小杉グループ)な どとの所内での効果的連携(例えば有機伝導体を用いたナノスケール素子の開発など)を含めて強力に推進されるこ とを望みたい。ナノスケールでの測定は有機伝導体などのバルク測定とは異なる独自の技術を要するものであり,今 回これまでセンターの活動の中心の一人であった夛田助教授が転出されるのに際し,後任ポストの確保,および優れ た後任者の選定が本センターの活動の次のキーポイントになると思われる。この分野は世界的にも競争が激しく,グ ループのスケールが勝負の分かれ目になるところがあるので,折角の優れた研究の方向が十分に活きる陣容を整えら れることが望まれる。これに対し,ナノスケール分子触媒の開発や,ナノ光計測は,分子研独自のものに発展する可
能性を持っている。既成分野との差異をいかにして打ち出し,ナノサイエンスに本質的寄与を行えるかが次の課題で あろう。また,合成関連分野においては,大学の合成グループが多くのメンバーのもとに多様な研究活動を行ってい るのにそのまま競合するのは有利でないように思われる。焦点をある程度絞り,できれば他分野研究者と互いに真剣 に相手分野に入り込んでの共同研究を行うといった活動により,関連分野に本質的貢献を行い,存在感を示すことが できると思われる。
流動研究部門は,現在は従来の組織から引き継がれたメンバーが多いようであり,また制度的な変化はあり得ると 思われる。本センターのイニシアチブのもとに客員などの形で実質的に継続することができるのであれば,有効に用 いることで上記のような方向付けを効果的に行うのに役立つであろう。
また,この種のサイエンスでは,新しい解析装置・ナノファブリケーション装置などの装置開発が先端を押し進め る有力な手段となる。この点,分子研は強力な装置開発室を有しており,独自の研究手法の開発に有利な立場にある。 今後の人事において,この種の装置開発指向の人材の獲得も視野に入れておくのが有効ではないかと思われる。
ナノサイエンスは,優れて学際的要素の強い学問分野であり,物質合成,新しい構造体の作成,その構造・機能の 解明,といった諸要素が緊密にからんで進むものと考えられる。従って,各グループの研究活動を活発にするほか,本 センター内での協力,研究所全体での協力,さらに所外との協力の全てを活発に行うことが望まれる。センター内で の協力は,このようなセンターを設置する重要な理由の一つであり,自らの分野での研究を進展させるだけでなく,互 いの分野に真剣に踏み込んでの刺激や協力が求められる。例えば金属ナノクラスターの触媒機能に関する研究がこの 成功例となることを期待する。また,このような点に対する組織的な取組として,センター内での研究交流会を行っ ておられるということであり,心強く思われる。
また,分子研においては,本センターの他,分子集団研究系を始めとする諸研究系・施設・研究センターが関連し た研究を行っているので,できるだけ緊密な研究体制を構築することが望まれる。この点では,山手地区と明大寺地 区とかなり離れた場所にいる双方のメンバーが,半定期的にでも研究交流を行う機会を組織的に設けることが有用で はないだろうか。
さらに,本センターには,国内の関連分野における拠点としての活動が求められよう。上記のナノ支援共同利用は この一環と考えられる。さらに,予算的に,また人的負担の面で可能であれば,関連分野の研究者を集めてのナノサ イエンス・テクノロジー研究集会(国内・国際)といったものを定期的に開催することも考えられる。例えば阪大産研で は,この種の研究集会シリーズを定期的に開催しておられる。このような会合で,分子研内部の関連研究者にも参加 を要請し,外部研究者も招いて,独自の視点にたった会議組織が行えれば,本センター独自の「ナノサイエンス」が 発信できるのではないだろうか。幸い分子研・岡崎コンファレンスセンターを含めて設備は恵まれているが,人的負 担が過重にならないように注意する必要があろう。すでに研究者個々人では種々の機会を用いてこのような活動を行っ ておられるのではないかと推測するが,センターとしての組織的取組もあって良いかと思われる。
いずれにせよ,本センターは分子研の将来や,日本のナノサイエンス・ナノテクノロジーにとって大切な方向を担っ ており,日本の分子科学が築いてきた高度な研究水準をナノスケールサイエンスに展開することにより,所内外に大 きな貢献をすることが期待される。
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(1)分子スケールナノサイエンスセンターでの分子研の役割,寄与と位置付け
本センターは,平成14年に発足以来,新しい機能を備えたナノ構造体の開発を行っている。さらに新しい科学を展
開するとともに分子科学の研究に共通性の高い物性機器研究設備の集中管理を行い,研究所内外の利用者との共同研 究を推進してきている。まだ新しい組織であり本年4月から加わったグループもあり,新鮮で生き生きとした雰囲気 が感じられる。分子エレクトロニクスおよびナノ触媒の分野で重要な役割を演じていることは,本センターに属する 先生方の多くの論文,学会発表をみれば明らかである。ナノサイエンスの分野は政府が21世紀の日本の科学ならびに 産業の柱として推進しようとする重点分野のひとつであり,その中心拠点として本センターの役割は大きい。今後益々 その重要性は大きくなると考えられ飛躍的な発展が期待される。
(2)当該センターの国内,国外での研究分野としての重要度
21世紀はナノの時代であり,分子スケールナノサイエンスはまさに科学のフロンティアである。そのため,これに 現在関わっている研究者も多く,今後この分野に参入する研究者も国の内外を問わず増加するだろう。もちろん競争 は非常に激しくなる。その競争の中で先頭を走るのがこのセンターの役割であり,責任も重い。新規大型機器導入に 努力を払い,その設備を中心として共同研究を積極的に進めることで国内のこの分野をリードしてほしい。
(3)今後この分野の発展はあるか,どのような方向か
ナノサイエンスということばが使われるようになって少し時間が経過した。とにかくナノサイズのものを作ろうと いう時代から機能を念頭において原子・分子レベルでナノの構造体を設計していくというところに移ってきている。こ の方向は益々鮮明になり,光機能,電子機能,触媒機能などをもつ分子をターゲットとした研究が中心となるであろ う。
(4)分子研の当該センターが今後どのように進むべきか
ナノサイエンスセンターの研究教育職員は,様々な研究のバックグラウンドをもっておりこのバックグラウンドを もとにセンターの設置目的である「原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新しい機能を備えた ナノ構造体の開発ならびにその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を 展開する」ために,各々が自由自在に発想し,研究を進めればよい。その中で共同研究がふさわしいものがあればこ れを進めればよい。無理に共同研究を考える必要はなく,あくまでも各々の個性を発揮してほしい。
センター発足以来2年数ヶ月の問に推進してこられた研究はいずれもすばらしいもので,これらをそのまま延長,展 開していかれることを望む。また新しいグループも加わり,互いに刺激しあいながらナノサイエンス上の課題に挑戦 することで,新しい共同研究の可能性も広がるだろう。
このセンターの設置目的のもう一つの柱である「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設備等の集中管理・共 同研究の推進」については,新規に導入された 920MHz NMR が広く,効率よく利用されるよう維持管理をお願いする とともに,この機器がとりもつセンター内外の共同研究が積極的に展開されることを望む。さらに新しい機器の導入 についても前向きな提案と財源の確保をお願いしたい。
(5)分子研の共同研究機関としての現状と将来への提言
全国の研究者から注目されているのが今年度導入された大型機器 920MHz 核磁気共鳴装置(NMR )である。理化学 研究所とあわせて全国で2台しかない装置であり,利用を望む研究者はかなり多数にのぼるであろう。さらに来年度 には固体サンプル用のプロ一ブも導入されると聞いている。液体サンプルの場合には前もって分子研ならびに他の研
究機関に設置されている 500MHz あるいは 600MHz の NMR で予備測定を行うことで 920MHz のマシンタイムを節約す ることができる。これに対して固体サンプルが測定可能な 500MHz あるいは 600MHz NMR は日本中にほとんどない。 したがって固体サンプルを測定しようとすれば直接 920MHz NMR を使用することになる。そのためマシンタイムをか なり専有することになり効率が悪い。そこで固体サンプルの測定ができる 500MHz あるいは 600MHz の NMR を当該セ ンターに導入していただくことを要望する。X線がとれないサンプルであっても多くの情報を得ることができる固体 の NMR は,ナノサイエンスにとつて非常に大きな武器となる。さらに一般にオープンして使用する世界でも初めての 装置となる。その点からも一目も早い導入に努力していただきたい。
(6)分子研に対する建設的批判,提言
分子研の一番の問題は学生を含めてマンパワーをいかに集めるかという点である。立派な施設,設備に対してあま りにも研究員や学生の数が少なく,いかにももったいないという感じである。大学院生の授業料を免除し,かつ給与 も出しさらに学生寮を作って,その給与の中で充分生活できるような割安な生活環境を提供するようなことをしても よいと思う。
施設にだけお金をかけるのではなく,人材にもお金をかけ日本の研究のトップを集めることを考えてほしい。大学 とは全く違う発想で考えてほしい。学生を集めるというのをやめて研究員をすべて雇用する理化学研究所のような形 態に変えてはどうか。それも破格の高給を出してエリート集団を作るというのはどうだろうか。さきがけなどの特別 な研究費をもらっている若手をその年限を切って分子研に集めて研究してもらう。あるいは逆に分子研で研究するこ とを前提とする特別の研究予算を立てて募集してはどうだろうか。
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本センターは原子・分子レベルでの物質の構造および機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の開発及 びその電子物性の解明を行うと共に,それらの研究を効率的に推進するために物性機器,研究設備の集中管理を行い, 研究所内外の研究者との緊密な連携協力の下で共同研究を推進することにより,物理的・化学的ナノサイエンスを体 系化し新たな研究領域を開拓することが期待されている。
そのために各研究グループ毎の独自テーマの遂行に加えて,今年度からセンター内外での共同研究の推進にも取り 組んでおり,その努力に敬意を表する。この時問題となるのは,共同研究の萌芽を育てる原資をどう工面するか,新 たなテーマにどのように限られた人材を投入するかであろう。
また,共通的な種々の機器や設備をそろえ管理提供する場合には,全国共同利用とするに魅力的な設備が肝要であ ると思われる。その意味で,920 MHz の NMR は固体試料に威力を発揮する最先端機器としてセンターの目玉となると 期待される。マシーンタイムや対象試料の共同利用に対してどのような運営形態を取りうるのか効率性のしくみが重 要になるであろう。さらに,NMR 以外にもナノサイエンス推進には重要かつ必要な機器があると思われるが,実際, どのような財源を用いて何を導入するかの検討も行われており,ナノファブリケーション設備の導入も候補にあがる など,センター内外の研究者にとり益々本センターの魅力が増すであろう。
今までの分子科学の枠組みと領域を超え,原子・分子レベルでのナノサイエンスを切り開き,また,新たな対象 物に対して積極的な展開を目指す分子スケールナノサイエンスセンターの発足は,極めて時宜を得た重要なセンター となるものと期待される。
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分子科学研究所は設立以来,世界的な拠点として「分子科学」をリードして来ており,現在も,また将来にわたっ て科学の世界でこの位置を保ち続けるであろう。分子科学研究所が世界をリードする研究所である背景には,新しい 科学を発信し続けてきたことがある。今回,評価委員会での説明を受け,分子科学研究所にとって,「ナノサイエンス センター」の設立がどういう意味を持っているのかを考えざるを得なかった。新しい科学の発信を目的としたものな のか,或いは,世の中の流れを取り入れた,研究所内の改組を目的としているものなのか,という疑問を感じた。組 織形態によってそこから生み出されるであろう科学を測ることは妥当とは思わないが,世間に充満している「ナノサ イエンス」に対して,分子科学研究所ならではのアプローチを期待するのは,行き過ぎであろうか。
ナノサイエンスセンターは「ナノサイエンス研究を行う」機能と,「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設 備等の集中管理・共同研究の推進」という機能を担うとされている。前者については,各グループが推進している個々 の研究は十分に高いレベルにあり,科学的な価値は疑う余地もない。(各グループの個別の成果については別途ふれる ことにする)発足間もない組織であることから,グループ間の共同作業の成果はまだあらわには見えてきていないが, 定期的に企画されている研究交流会を通じて新しい共同研究の芽が育ってくることに期待したい。後者については,ま だ整備段階にあるが,文部科学省のナノ支援プログラムにより導入されたNMR 装置が現在ほぼ整備を完了しつつあり, 本装置はナノセンターの中核設備として今後,ナノサイエンス研究の共同研究推進に寄与することが期待されている。 本装置により,あらたな化学領域がつくられるであろうことは想像に難くない。分子科学研究所がこれまでに果たし てきた役割を考えるとき,独自に開発してきた計測装置を基礎として,新しい科学分野に切り込んでいった歴史を忘 れてはいけない。特に,レーザー分光を中心とする計測技術のポテンシャルは,分子研の研究を特徴付けるものであ ろう。独自装置の開発には人と予算が必要であるが,現在のナノセンターの限られた人材のなかで,どこまで実行可 能であるのか,はなはだ疑問である。
なお,ナノ支援プロジェクトのミッションとナノサイエンスセンターが担う所内外との共同研究の立場がどういう 関係にあるのかはよく理解できなかった。